【文章の書き方編】毎日少しずつ「文章力」を上げる方法【2】
前回は「読み手を意識する」視点や考え方を事例を交えてお伝えしました。今回は実践的な文章の書き方として、「シンプルに書く」と「具体例を使う」というふたつの方法をご紹介します。
本記事では、すぐに実践できる文章力を上げる具体的な方法をお伝えします。完璧を目指すのではなく、毎日少しずつ、無理のない方法を積み重ねることで、確実に文章力は向上します。下記シリーズで解説します。本原稿は「文章の書き方」です。
- 【文章の構成編】毎日少しずつ「文章力」を上げる方法【1】
- 【文章の書き方編】毎日少しずつ「文章力」を上げる方法【2】
- 【書く習慣編】毎日少しずつ「文章力」を上げる方法【3】
- 【7日間の実践プログラム編】毎日少しずつ「文章力」を上げる方法【4】
- 【よくある悩みと解決法編】毎日少しずつ「文章力」を上げる方法【5】
- 【文章力アップに役立つツール編】毎日少しずつ「文章力」を上げる方法【6】
もくじ
伝わる文章の基本はシンプルに書くこと
1.一文を短くする
2.余計な言葉は削る
3.要点をはっきりさせる
抽象的な説明をわかりやすくするために具体例を挙げる
1.相手にとって身近なたとえ話を使う
2.数字を使う
3.イメージしやすい表現を使う
まとめと余談
伝わる文章の基本はシンプルに書くこと
文章を書くときに陥りやすいのは、「詳しく説明しすぎる」ことです。とくに経験が長いほど無意識に業界用語や専門用語が日常用語になっていますので、自分では気がつきにくいです。
文章を書くときは、その点を「読み手を意識する」際に、その読み手にとってなじみの言葉かどうかは一度考えたいところです。シンプルに書くにはコツが3つあります。一文を短くする、余計な言葉は削る、要点をはっきりさせるです。
1.一文を短くする
ありがちなのが、長文で言いたいことを全部詰めこんだような文章です。たとえばこんな一文です。
【改善前】
当社が提供するコンサルティングサービスは、長年の経験と実績に基づいた独自の分析手法を用い、クライアントの課題を多角的に分析し、具体的な解決策を提案することで、業務効率の向上とコスト削減を実現する包括的なソリューションです。
この文章の特徴は、一文がとにかく長く、情報が詰め込まれ過ぎている上に、専門用語が多くてわかりにくい点です。なんか「それっぽい」のですが、顧客に対してどんないいことがあるのか、伝わりにくいですよね。
この文章をシンプルにするために、次の3点に注意して文章を直してみます。
- 長文を分割して一文を短くする
- 箇条書きを使ってポイントをまとめる
- わかりにくい言葉や余計な修飾語をわかりやすくする
【改善後】
当社のコンサルティングサービスは、3つの特徴があります。
- 独自の分析手法を使用
- 具体的な解決策を提案
- 業務効率とコストを改善
一文を短くしてみると、これだけシンプルな内容になります。「それっぽさ」は損なわれましたが、何が書いてあるのかはパッと見でわかるようになりました。
2.余計な言葉は削る
わかりやすい文章を書きたいときに気を配りたいのが、余計な言葉をたくさん使って「頭がよく見えるような言い回しにしない」ことです。文章を堅苦しく書くのはとても簡単です。本当に難しいのは、どんな方にも伝わるやさしい文章です。
【改善前】
一般的に言えば、このような状況において、ある程度の時間をかけて慎重に検討する必要があると考えられます。
よくあるのがこういう文章です。一文が長く、硬い言葉を使うことで重さもあります。でも、この文章が言いたいことを余計な言葉を削ると、次の一文になります。
【改善後】
この状況では、じっくり検討が必要です。
文字数も半分以下ですし、重さも消えました。ですが、誰にでも内容が伝わります。
3.要点をはっきりさせる
重要なのは、最初に結論を示すことです。結論を示すために要素として次の点に気をつけると、情報の取捨選択がしやすくなります。
- 読み手が知りたい情報を冒頭にもってくる
- 5W1Hを意識する
- 数字や具体的な内容を示す
- 期限がある情報はとくに目立つようにする
たとえば、私がケーキ屋さんだとします。季節のケーキ発売にあたって何かX(旧Twitter)でつぶやきたいと思ったときの投稿例をつくってみました。改善前と改善後、どちらがわかりやすいでしょうか。
SNS投稿の例
改善前の投稿はケーキ屋さんに限らず、ありがちな投稿です。あいさつとお知らせを入れて、最後に結論を書く。改善後のほうは、結論と重要度の高い情報だけに絞ってまとめたものです。
ケーキ屋さんが読み手になってほしいのは「買ってくれるお客様」です。「買ってくれるお客様」にとって重要なのは、新発売情報ですから、ケーキ屋さんが書きたい文章は、「買ってくれるお客様」がその投稿を見て「買いに行きたくなる」文章です。
メールの例
また、次の例はお客様から問い合わせを受けた返信例です。日常でテキストベースでのやりとりは多いと思いますが、こうしたちょっとしたやりとりにこそ、文章力は活かされます。
ありがちなのが、右の改善前の文章です。丁寧な応対とは思いますが、改善後の文章のほうが、受け取った側には要点が視覚的に整理してあるため、理解しやすいです。
SNS投稿と同じで、このメールの文章にも以下の点が活かされています。
- 読み手が知りたい情報を冒頭にもってくる
- 5W1Hを意識する
- 数字や具体的な内容を示す
- 期限がある情報はとくに目立つようにする
報告書や記事など、長文を書くことも文章を書くことにあたりますが、こうした日常生活で発生するテキストでのコミュニケーションも、文章を書くことになります。こうした場面でこのポイントに気をつけながら書くことを意識すると、日々の暮らしのなかで文章力を上げていくことができます。
抽象的な説明をわかりやすくするために具体例を挙げる
わかりやすく伝えるには、具体例を挙げることも方法のひとつです。
1.相手にとって身近なたとえ話を使う
この記事を書くにあたっても、「シンプルに書く」「具体例を挙げる」がこの記事の要点ですので、この2フレーズを書いたら終わりです。ですが、これだけ言われてもわからないので、どんな場面で誰がどうやれば「シンプルに書け」て、「具体例を挙げる」ことになるのかを説明しています。
前述したケーキ屋さんのSNSや問い合わせメールへの返信も、「具体例を挙げ」て説明することで「こういうことか」と腹落ちしやすくなるよう心がけています。
改めて、ここでも例を挙げてみます。マーケティングシステム導入を検討している現場の担当者Aさんが、システム会社の営業Bさんと話しています。営業Bさんが、システムをよくわからない担当者Aさんと話すとき、こんな言葉をかけられたとします。
【改善前】
システム導入により業務プロセスを最適化します。
営業Bさんにとっては、これ以上でもこれ以下でもないのですが、Aさんには何がどうなるのかよくわかりません。そこで営業Bさんが、Aさんの日常を例にたとえ話をすると、こんなふうに変わります。
【改善後】
システム導入は、散らかった部屋を整理整頓するようなものです。必要なものを探す時間が短くなり、作業がスムーズになります。
この表現を聞くと、「業務プロセスを最適化」が何を表すのか伝わりやすくなりますよね。
2.数字を使う
抽象的な説明は、数字を使って具体的に表現します。たとえば、営業Bさんの社のシステムを担当者Aさんが導入すると、担当者Aさんの日常の何が変わるかを表現してみます。
【改善前】
システムを導入すると、毎日の作業時間が大幅に削減されます。
【改善後】
システムの導入をすると、作業時間が平均30%削減されます。たとえば、月間40時間の作業が28時間に削減できます。
「大幅に削減」だとかなりざっくりしていますが、「平均30%削減」「月間40時間が28時間に削減」となると、削減のインパクトがどのくらいあるのか伝わりやすくなります。月の作業時間が30%減らせるなら、担当者Aさんは上司や同僚にシステム導入のメリットを説明しやすくなります。
3.イメージしやすい表現を使う
専門用語は身近な言葉に置き換えます。ここでも、マーケティングシステム会社の営業Bさんが、「マーケティングオートメーション」システムを販促の担当者Aさんに伝える文章を例に挙げてみます。
【改善前】
弊社のシステムを導入すると、マーケティングオートメーションによって顧客接点を最適化できます。
担当者Aさんは、営業Bさんからこの説明文が送られてきたとき、心は動くでしょうか。動きませんよね。では、営業Bさんが同じ内容を担当者Aさんにわかるようにイメージしやすい表現で書いたとすると、どうなるでしょうか。
【改善後】
弊社のシステムを導入すると、お客様ひとり一人に、適切なタイミングで最適な情報をお届けできるようになります。本来担当者の方が計画を立てて、手動でのご連絡が必要なところを、システムによって自動配信できるようになります。たとえば下記のような使い方です。
- 資料請求後3日目にサービスの使い方動画を自動送信できる
- 契約完了後、1週間毎日サービスの使い方や活用事例をメールで自動配信できる
- 契約更新1か月前にお得な継続プランのご案内を自動配信でき、サービス契約の継続率を高められる
担当者Aさんが自社サービスの販促を行うにあたって、営業Bさんの会社のシステムを使うと、どのシーンで何ができるか具体的にイメージしやすくなります。「イメージしやすい表現を使う」とは、相手の頭の中にイメージが浮かべやすい表現を使うということです。
まとめと余談
具体例を挙げながら説明してきましたが、メールもレポートもSNS投稿も企画書も報告書も、どんなシーンにおいても「シンプル」かつ「具体的」に書くことで、伝わる文章になります。「シンプルに書く」「具体例を挙げる」を意識しながら、次から文章を書いてみてください。
余談ですが、私が新卒後に原稿を書き始めた頃、先輩に原稿を書くときに指摘された内容を「原稿を書くポイント集」として小さなメモにまとめ、デスクに貼っていました。このメモを見ながら毎回原稿を書き、書き上げた後にもチェックして、加筆・修正を重ねていました。
20代はそのメモを更新しながら原稿を書くたびに使い、30代以降はこれらを踏まえて原稿を書くことが習慣になりましたので、使わなくなりました。
ここで書いた内容を自分の血肉にするには少し時間はかかりますが、確実に原稿の書き方が変わります。文章を書くことに課題を感じている方に、とくにおすすめです。
次回は、【書く習慣編】毎日少しずつ「文章力」を上げる方法【3】をお届けします。