文章を書くとき、「書き出しのところで詰まってしまう」「どんどん長くなって、まとまらない」「いつも同じような表現になってしまう」と悩んでしまう方も多いと思います。
でも、大丈夫です。それぞれ解決方法があります。今回はよく寄せられる3つの悩みとその対処法をご紹介します。
本記事では、すぐに実践できる文章力を上げる具体的な方法をお伝えします。完璧を目指すのではなく、毎日少しずつ、無理のない方法を積み重ねることで、確実に文章力は向上します。下記シリーズで解説します。本原稿は「よくある悩みと解決法編」です。
もくじ
よくある悩みと解決方法
書き出しが浮かばない
1.テンプレートの活用
2.箇条書きから始める
3.話すように書く
長くなりすぎる
1.一文一意見
2.接続詞を見直す
3.読み返して削る
表現が単調
1.類語辞典の活用
2.比喩表現の練習
続けるためのコツ
まとめ
端的に言うと、文章が書けないのは、書きたいことが整理できていないからです。そんなときは、まず頭の中にあることを書き出して、どんな言葉を頭の中にもっていて、伝えたいのかを整理します。そのときに使うのがPREP法(※後述します)です。
これまでの記事でもいくつかテンプレートをご紹介してきましたが、すべての基本となるのはPREP法です。これをジャンルや用途に分けてフォーマットしたものが、テンプレートです。
PREP法とは、最初と最後に結論を伝え、主張に対する根拠や理由を明確にするフレームワークです。
■PREP法の基本構造
PREP法を使って文章をつくるのは、考えを整理して、順序立てて説明する。かつ、相手に伝わりやすい文章をつくるためです。
思いつくことを全部並べられて、「はい、わかりました」という方はいません。話は整理したほうが伝わりやすいので、フレームワーク(型)に当てはめて整理し、迷っている時間を短縮しましょうという話です。
0→1で考えるのは誰でも難しいです。書き出しが浮かばないときは、次の3つの方法を試してみます。
PREP法を使って文章を組み立ててみます。書きたい文章のテーマは「読書の効果」とします。
【結論(Point)】
読書は、とても良い習慣です。
【理由(Reason)】
その理由は3つあります。
・新しい知識が増える
・想像力が豊かになる
・集中力が高まる
【事例(Example)】
私の経験を話します。毎日10分の読書を始めたところ、
・知らない言葉を5つ覚えた
・物語の続きを想像するのが楽しくなった
・宿題に集中できるようになった
【Point】
このように、読書は私たちの毎日をもっと楽しく、豊かにしてくれます。ですから、この習慣をおすすめしたいです。
テンプレートを使って書き出してみると、何を伝えたいかがわかりやすくなります。こちらで完了としてもいいですし、内容をより深めていきたい場合は、こちらを原稿の構成案として書き進めていきます。
PREP法で書けない場合は、そもそも何を伝えたいのかがまだ自分でもわかっていない状態です。ですので、何が書きたいのか、なぜ書きたいのかを知るためにも、まずは書きたい内容を箇条書きで書き出してみます。手順はこの流れでやってみます。
たとえば、「好きな本の紹介」をテーマに文章を書きたいとします。以下は箇条書きから文章につなげていく流れの例です。
【STEP1】思いつくことを箇条書きにしてみる
・冒険の物語
・主人公が中学生
・友情がテーマ
・感動した
・面白かった
・シリーズの続きが気になる
・心に残る言葉が多かった
【Step2】整理して分類する
■本の基本情報
・冒険物語
・主人公は中学生
・友情がテーマ
■よかったところ
・心に残る言葉が多かった
・続きが気になる
■感想
・感動した
・また読みたい
【Step3】文章にする
私がおすすめしたい本は、『○○○○』という冒険物語です。主人公は中学生で、友達との友情を描いた物語です。
文中で使われる表現や言葉も、心に残ります。読み始めると続きが気になって、一気に読んでしまいました。とても感動する場面があり、何度も読み返しています。みなさんにもぜひ読んでほしい一冊です。
できるだけシンプルな内容でStepをまとめてみましたが、いかがでしょうか。
箇条書きから原稿を書くときは、思いついたことを順番は気にせずすべて書き出します。短い言葉でかまいません。それらを整理する際は、「似たもの」をまとめ、重要なものを選択し、順番を考えます。この時点で文章全体の流れが決まるので、あとはつなげて文章にするだけです。
箇条書きから始めると考えがまとまりやすく、文章を書く心理的なハードルも下がります。物事を整理してから文章にするので、書きたいことやポイントを切り分けて書きやすくなります。
「書くと堅くなってしまう」「自然な文章が書けない」「でも何か書きたい」。そんなときは、スマートフォンに向かって録音してみてください。誰かに話すようにして録音してみると、言いたいことが言葉になりやすいです。音声入力でもOKです。
「いい本に出会ったことを文章で伝えたい」という思いを持つ方が、スマートフォンで話を録音し、文章化する例を挙げてみます。
【STEP1】録音しながら話す
「ねぇ、今日ね、すごくいい本を見つけたんだ。この本がね、すごくわかりやすくて。とくに図解がよくて、一目で理解できたのがよかった」
【STEP2】要点を整理する
・いい本を見つけた
・わかりやすい
・図解がよかった
【STEP3】文章化する
今日、とてもいい本に出会いました。この本の特徴は、わかりやすさです。とくに図解がよくて、内容が一目で理解できます。
話すことから始めると、自然な表現が見つかり、言いたいことが明確になります。話し言葉から書き起こしていますので、読みやすい文章になることも期待できます。
文章を書くときの「あるある」が、長すぎる文章です。こちらにも対策があります。
まず見直していただきたいのは「一文一意見」の原則です。ひとつの文にはひとつの内容だけを書きます。文章を書く上での基本中の基本です。複数の内容を一文に詰め込むと、文章は長くなり、読みにくくなります。
【改善前】
新商品は使いやすさを重視して開発し、デザインも洗練されていて、しかも価格も手頃で、多くのお客様から好評をいただいており、今後の売上増加が期待できる商品です。
↓
【改善後】
新商品の特徴は3つあります。
・使いやすさを重視して開発
・洗練されたデザイン
・手頃な価格に設定
お客様からも好評で、今後の売上増加が期待できます。
改善前と改善後の文章は同じ内容ですが、改善前の文章は一文に詰め込まれすぎていて、結局何を言いたいのかよくわかりません。全体の文章量が増えても、一文に一意見ずつ分けた改善後のほうが伝えたいことがわかりやすくなります。
書いた文章が複雑に感じるときは、接続詞が必要以上に入っていないかを確認してください。よくあるのが、こんな例です。
【改善前】
営業成績は好調です。また、顧客満足度も高いです。さらに、社員の士気も上がっています。
↓
【改善後】
営業成績は好調です。顧客満足度も高く、社員の士気も上がっています。
赤字で示した接続詞は、文中になくても意味が通ります。こういう場合は、削除します。
接続詞の考え方は3つです。
記事を書く仕事で「いい文章」と言われる文章の特徴に、「最低限の接続詞できちんと意味が通る」ことがひとつ挙げられます。
文脈にアクセントをつけたくて「しかしながら」を多用する方もいますが、接続詞は「ここから文脈が変わりますよ~」というお知らせなので、「接続詞がある=注意を促す」ことになります。
お知らせは少ないほうが文章の中身に集中しやすいですよね。ですから、接続詞の使用は最低限にします。「言いたいだけ」で使わないのも、接続詞を使うときのポイントです。
文章が長くなりすぎるときは、最後に推敲して、削ります。ポイントは、
です。
■不要な言葉を削除する例
【改善前】
私の個人的な意見としては、A案がよいのではないかと考えております。
↓
【改善後】
A案を推奨します。
■重複表現を削除する例
【改善前】
過去の経験と実績から、現時点での現状を踏まえて、将来の予測と見通しを立てました。
↓
【改善後】
過去の実績を踏まえ、将来を予測しました。
どちらも要点がまとまって、すっきりしました。短文になることを恐れず、要点が誤解なく伝わることを重視します。
いつも同じような表現になってしまうときは、「類語」「比喩」「感情表現」を取り入れることで、豊かな表現ができるようになります。
類語辞典の活用から始めましょう。「よい」「わかる」「すごい」といった基本的な言葉は、文脈に応じた最適な言い換え表現があります。
たとえば「よい」は、能力を表現するときは「優れている」、感動を伝える時は「素晴らしい」というように、場面に合わせて使い分けることで文章が洗練されます。「すごい」という言葉もよく使われる言葉ですが、場面や対象によって最適な表現が変わります。例を挙げてみます。
「すごい」の類語
■感動・感嘆を表現するとき
・「素晴らしい」:純粋な感動や賞賛
・「感動的な」:心を動かされる出来事
・「圧巻の」:その規模や内容に圧倒される
■能力・技術を評価するとき
・「卓越している」:特に専門的な能力が際立っている
・「優れている」:一般的な能力の高さを示す
・「傑出している」:他と比べて群を抜いている
■成果・実績を評価するとき
・「驚異的な」:予想を大きく上回る結果
・「画期的な」:今までにない新しい成果
・「抜群の」:他と比べて特に優れた成果
■量や規模を表現するとき
・「膨大な」:量が非常に多い
・「壮大な」:規模が非常に大きい
・「桁違いの」:通常の範囲を超えている
「すごい」という言葉ひとつとっても、これだけの類語があります。同じ表現を立て続けに使うような場面では、類語で言い換えることで、どうすごいのかを深みのある表現で伝えることができます。
類語はオンライン辞典で調べられますので、ブックマークして常に使えるようにしておくと便利です。
類語辞典>>
類語は何度も調べて使っているうちに、自分の「語彙」として定着するものも増えていきますので、ときどきそれに気づいてうれしくなる副産物(?)もついてきます。
比喩を意識的に使ってみましょう。抽象的な説明は、身近なたとえを使うことでぐっとわかりやすくなります。「光のように速い」「まるで映画のようだ」など、相手がイメージしやすい表現を心がけます。
「まるで○○のようだ」とたとえられたらOK。
比喩を考えるときのポイントは、
です。
■「速い」の比喩の例
・光のように速い
・風のように駆け抜ける
・瞬く間に終わる
【例文】「速い」を比喩で表現する場合
山田くんは走るのが速い。
↓
山田くんは風のように駆け抜ける。
■「冷たい」の比喩の例
・氷のよう
・真冬の窓ガラスに触れたよう
・冬の石の床を素足で歩くよう
【例文】「冷たい」を比喩で表現する場合
佐藤さんの指先は冷たい。
↓
佐藤さんの指先はまるで氷のようだ。
比喩を使いこなすには慣れが必要ですが、あきらめずに取り組むうちに慣れてきます。
余談ですが、私が新米編集者のときは、先輩たちと比喩連想ゲームを移動時間やランチのときの雑談替わりによくやっていました。今言いたい感情を、上記のように比喩で言い換えるゲームです。
慣れるまでもどかしかったり、言葉が出てこないことにいらいらもしますが、しばらくやっていると慣れてきます。毎日の3行日記で取り組んでみるのもおすすめです。
文章力を上げるには、少し時間がかかります。ポイントは気長にコツコツやることです。
毎日たった5分でも続けることに意味があります。通勤電車や待ち時間に本を読む、寝る前に3行日記を書く、SNSの投稿を見直してから投稿する。こうした小さな習慣から始めてみてください。
記者やライターが書く仕事を始めるときも、同じように訓練します。
新卒で書くことを始めると、最初の1~2年は先輩にOKを出してもらえるまで、何回も何回も直します。3年目ごろにようやく「書くためのフォーマット」が自然と頭に入り、あれこれ書けるようになり始めるイメージです。
ですから、完璧を目指さず、「今日は3行で要点をまとめられた」「相手に分かりやすいと言ってもらえた」などの小さな成功体験を積み重ねながら気長に取り組んでみてください。
次回は、【よくある悩みと解決法編】毎日少しずつ「文章力」を上げる方法【5】をお届けします。