「制作会社の管理費が高いから、全部自分でやりたい」
「もう業者に頼みたくない」
そんなふうに感じている方、意外と多いのではないでしょうか。
ですが、「完全に自分でやろう」とすると、かえって時間もお金もかかってしまうことがあります。この記事では、私が日々お客様と接する中でお伝えしている、「現実的で、ちゃんと続けられるWebサイト管理の考え方」について、私自身の経験も交えて解説します。
完全自立には相応のコストがかかる
Webサイトの管理を完全に自分で行おうとすると、以下のような費用と時間が必要です。たとえば、以下のような時間がかかります。
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基本的な知識の習得: 50〜100時間
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トラブル対応の勉強: 都度、数時間〜数日
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実際の作業: 月あたり5〜10時間
見えにくい「隠れコスト」もあります。
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学習中のミスによる損失(間違えて消してしまった……とか)
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トラブル時に失う機会や売上(わからなくて壊してしまった……とか)
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本業に使えるはずの時間と集中力を消耗する(慣れないことゆえに時間がかかる……とか)
ひとりで全部やることは、時間もお金も想像以上に負担が大きくなる現実が、あります。
自己管理に切り替えるだけでも、意外と大変
制作会社から自己管理に移行する際も、費用とリスクが発生します。
■一時的な費用の目安
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サーバーやドメインの移行代行:5〜15万円
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新しい環境の構築:3〜10万円
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トラブル対応費用:2〜8万円
■移行時の注意点
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サイトやメールが一時的に止まる可能性
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万一の復旧作業に時間とお金がかかる
これらを考慮すると、「管理費を節約するために移行したのに、結果的に高くついた」ということも珍しくありません。
本当に重要なのは「誰に相談するか」
多くの方が誤解されているのですが、問題は「制作会社やコンサルに頼むこと」ではありません。問題は「適切でない業者に頼み続けること」です。大切なのは、適切な専門家を見極める力をもつことです。
良い専門家の特徴
- 見積もりや作業内容が明確
- 作業内容や専門用語をわかりやすく説明してくれる
- 長期的な視点でアドバイスしてくれる
- あなたの事業規模やフェーズに合ったサービスを提案してくれる
避けたい業者の特徴
- 金額や作業の説明があいまい
- 専門用語を並び立て、説明がよくわからない
- 高額なサービスばかり勧めてくる
- 契約期間や解約条件が不明瞭
- 「わからない」と言えない雰囲気がある
「わからないことはわかる人に聞く」が最も確実
たとえば、あなたの時間単価が5,000円だとします。
さらに、専門家のように日々この分野に触れている人と、年に数回しか触らない私たちとでは、経験の差もはっきりしています。
「Webサイトをすべて自分で管理する場合、完全自立だけが正解ではありません。日常の更新は自分で行い、専門的な作業はプロに任せるなど、自分の状況に合わせた「現実的で続けられる管理スタイル」を選ぶことが、無理なくWebを活用していくコツです。
ちなみに、私はほとんどの作業を自分でやりますが、エンジニアの知識はありません。ですので、サーバーまわりや、何かトラブルが起こった際は、エンジニアの方に外注しています。頻度で言うと、年に1回あるかないかぐらいです。
専門家選びの基本的な考え方
Webサイトの制作や保守を依頼する際は、自分の状況や予算、求める品質に応じて適切な専門家を選ぶことが重要です。選択肢は主に3つ。それぞれに異なる特徴とメリット・デメリットがあります。
- 個人のWebエンジニア・デザイナーに依頼する場合
個人で活動しているWebエンジニアやデザイナーは、フリーランスとして独立して働いている専門家です。このタイプの専門家を選ぶ最大のメリットは、柔軟な対応が期待できることです。変更依頼や要望にも比較的柔軟に対応してもらいやすいです。
価格面でも比較的リーズナブルなことが多く、個人事業主や小さな会社の経営者にとって魅力的な選択肢となります。また、直接やり取りできるため、コミュニケーションがスムーズで、細かなニュアンスが伝わりやすいのもいいところです。
ただし、個人で活動している以上、体調不良や急な都合により作業が止まってしまうリスクもあります。個人のスキルや経験に依存する部分が大きいため、事前の実績確認も重要です。お互いわからないまま仕事を受発注してしまうと、トラブルが起こりやすいので、注意が必要です。
- 小規模なWeb制作会社に依頼する場合
小規模なWeb制作会社は、数名から十数名程度のスタッフで運営されている制作会社です。このタイプの会社を選ぶメリットは、個人よりも安定したサービスを受けられることです。複数のスタッフがいるため、ひとりが不在でも作業が継続でき、品質管理も組織的に行われます。
とくに中小企業の事情をよく理解している会社が多く、限られた予算の中で最大限の効果を出すための提案を得意としています。大手企業とは異なる中小企業特有の悩みや要望に対して、適切方法を提案してくれる可能性が高いです。もちろん相性もありますので、事前によく調べることをお勧めします。
- 保守専門の会社に依頼する場合
保守専門の会社は、Webサイトの制作は行わず、既存サイトの管理や運用に特化した会社です。このタイプの会社を選ぶ最大のメリットは、管理業務に特化しているため技術力が高く、専門的な知識を持っていることです。
価格体系もわかりやすく、月額固定料金などの料金設定になっていることが多く、予算計画が立てやすいメリットがあります。また、保守業務に特化しているため、セキュリティ対策やバックアップ、サーバー管理などの重要な業務を確実に行ってもらえます。
ただし、新規制作は行わないため、サイトのリニューアルや大幅な変更が必要な場合は、別途制作会社を探す必要があります。
避けたい相手について
専門家を選ぶ際に注意したい相手もいます。大手制作会社の下請けとして作業を行う業者は避けたほうがいいです。この場合、中間マージンが発生するため、同じ作業でも価格が割高になりがちです。また、実際に作業を行う担当者と直接やり取りできないため、要望が正確に伝わらず、思った通りの結果が得られない可能性があります。
営業を主体としている会社も注意が必要です。こういった会社は営業スタッフは充実していますが、技術者が少なく、作業を外注に依存している場合があります。そのため、相談してもすぐに返事が返ってこなかったり、お願いした内容と違った納品物が上がってきた場合に交渉や相談が難しく、理不尽な形で追加料金を要求されることもあります。
良い専門家を見分ける質問
Webサイトの制作や保守を依頼する専門家が、本当に信頼できるかどうかを最初に会ったときに判断するのは難しいです。ですが、初回の相談時にいくつか質問をすることで、実力や対応力を垣間見ることができます。以下の4つの質問を参考にしてみてください。
- 「弊社の規模だと、どの程度の管理が必要ですか?」
この質問をする理由は、相手が事業規模に合わせた適切なアドバイスができるかを確認するためです。
優秀な専門家なら、会社の従業員数や事業内容、予算規模を聞いた上で、「御社の規模でしたら、基本的なセキュリティ対策と月1回の更新作業があれば十分です」といった具体的で現実的な提案をしてくれます。
一方で、経験が浅かったり、営業重視の会社は、どんな規模の会社にも同じような高額なサービスを勧めてきたり、曖昧な回答しかできなかったりします。こちらの状況を理解しようとせずに提案をする相手は、もちろん避けたほうがいい相手です。
- 「作業内容と費用の内訳を教えてください」
この質問は、専門家が透明性を持って仕事をしているかを確認するためにします。
信頼できる専門家は、「デザイン作成に〇時間で〇万円、プログラミングに〇時間で〇万円、テスト作業に〇時間で〇万円」というように、何にどのくらいの時間と費用がかかるかを、その場でざっくりと説明ができます。
逆に、「一式〇万円」のような大まかな見積もりしか出さなかったり、質問しても詳しい説明を避けるような相手は注意が必要です。そういう場合は、追加費用が発生したり、思っていた内容と違う結果になることが起こりやすいです。
- 「緊急時の対応はどうなりますか?」
この質問は、実際にトラブルが発生した時のサポート体制が整っているかを確認できます。
Webサイトは24時間稼働しているため、時には急にサイトが表示されなくなったり、セキュリティの問題が発生することがあります。そんな時に、「平日の営業時間内のみ対応」なのか、「緊急時は24時間以内に対応」なのかによって、安心感が大きく変わります。
しっかりとした専門家であれば、緊急時の連絡方法や対応時間、追加費用の有無などを説明してくれます。曖昧な回答しかできない場合は、実際にトラブルが起きた際に適切なサポートを受けられない可能性があるとわかります。
- 「他のお客様はどんな業種の方が多いですか?」
この質問は、こちらの業界について理解があるかを確認するためのものです。
たとえば、私が飲食店を経営している場合、同じような飲食店のWebサイトを多く手がけている専門家であれば、「メニュー表示の見やすさ」や「予約システムの重要性」などを理解しており、その業界のなかで必要なことを踏まえて提案してくれる可能性が高いです。
同じ業種の経験がなくても、過去に近しい経験があれば、ビジネスの特徴や課題を理解した上で、適切なアドバイスを期待できます。逆に、あまりにも畑違いの業界を手掛けていたり、こちらの業界特有のニーズを理解する気がない場合は、苦労することが目に見えているので、具体的な実績を確認することはとても大切です。
専門家との上手な付き合い方
Webサイトの管理を専門家に依頼する際は、全てを丸投げするのではなく、協力して進める姿勢を依頼する側がどれだけできるか。それが結果を大きく左右します。
把握したい4つのポイント
- 月々の作業内容
何をいつやってもらっているかを知ることから始めます。「毎月第1週にセキュリティ更新」など、具体的なスケジュールを把握することで、作業が適切に行われているかを確認できます。ここを知らない担当者はけっこう多いです。
- 緊急時の連絡方法
サイトが突然表示されなくなった時に、どこに連絡すればいいか、必ず確認します。緊急連絡先と対応時間を把握しておくと、何か起こったときに慌てずに済みます。
- 費用の内訳
毎月の基本料金に何が含まれているか、追加作業が発生した場合の料金はどうなるかを確認しておきます。予算管理がしやすくなりますし、費用が適切かどうかの判断基準が、自分のなかに知見として貯まるようになります。
- 年間のメンテナンススケジュール
サーバーやドメインの更新時期など、年に数回行う重要な作業のスケジュールを把握します。突然の出費や、更新を忘れて慌てることがなくなります。
技術的な判断や具体的な作業、セキュリティ対策は専門家に任せると安心して過ごせます。無理に関与しようとすると、かえって効率が悪くなったり、品質が悪くなる可能性があるからです。とくに多いのは、トラブルが起こったときと、サーバーやドメインの更新を忘れてしまうことです。これが起こると一大事です。
知識を身につける本当の目的
Webサイト管理の知識を学ぶ目的は、全て自分でできるようになることではありません。以下のことができるようになることが、目的でもあります。
- 専門家と対等に話せるようになる
基本的な知識があれば、専門家からの提案内容を理解でき、適切な質問ができるようになります。また、費用が妥当かどうかも判断できるようになります。
- 緊急時に基本的な対応ができる
問題が発生した時に「サーバーの問題か、プログラムの問題か」といった基本的な切り分けができれば、専門家への依頼内容を明確に伝えられ、迅速な解決につながります。
- 事業への活用を判断できる
「予約システムの導入」などの改善提案を受けた際、それが本当に自分のビジネスに効果があるかどうか判断できるようになります。判断軸が育っている中での提案なら、検討のしようもありますし、業者にいいように使われることもなくなります。
専門家との良い関係を築くには、適切な役割分担と基本的な知識が必要です。任せきりにするのではなく、協力して進めることで、より良い結果を得ることができます。
まとめ
ホームページ管理において最も重要なのは、「完全自立」でも「完全丸投げ」でもなく、現実的で持続可能な管理方法を見つけることです。
完全に自分でやろうとすると、学習や作業に膨大な時間がかかり、見えないコストも発生します。一方で、よくない業者に依頼し続けることも問題。重要なのは、説明がわかりやすく、かつ自分の事業規模に合った提案をしてくれる専門家を見つけることです。
いちばんいいのは、日常的な更新は自分で行い、技術的な作業や緊急時対応は専門家に任せる役割分担ができること。そのためには、専門家と対等に話せる程度の基本知識を身につけ、適切な質問ができるようになることです。そうなれるまで少し時間はかかりますが、コツコツ続けるとそれほど苦ではなくなりますし、楽しくなる瞬間もやってきます。ですから、ひとつずつ、やっていきましょう。
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